toioは触ってあそべるロボットトイのプラットフォーム

―――そもそも「toio™(トイオ)」は、どのような商品でしょうか。開発コンセプトを教えてください。

田中:toioは2台のロボットに自分の好きなキャラクターを載せて、いろいろなあそび方を楽しめるロボットトイです。「toio コンソール」、2台の「toio コア キューブ」、2台のリング状コントローラー「toio リング」で構成され、コンソールに別売のタイトルに同梱されたカートリッジを差し込むことで、さまざまなあそびを切り替えられるのが最大の特徴。何の変哲もないように見えるシンプルな四角いロボットにキャラクターを載せ、バトルゲームをプレイしたり、プログラミングで思い通りに動かしたりと、幅広いあそび方を用意しています。簡単に言えば、触ってあそべるロボットトイのプラットフォームですね。

―――PlayStation®のようにモニタの中であそぶのではなく、手で触ってあそべるのがユニークです。

田中:“インタラクティブエンタテインメント”と呼べる体験は、決して画面の中だけのものではありません。PlayStationがデジタルやバーチャルなあそびが中心だとしたら、toioはリアルな実世界のあそびを提供するものなんです。

アレクシー:もともと僕は、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)で次世代エンタテインメントを研究してきました。そんな中、2012年に田中とアレクシーがいろいろあーだこーだと話しながらアイデアを形にしていったのがtoioの発端です(笑)。子どもはおもちゃを手に取り、ガシガシとぶつけて戦わせるあそびが好きですよね。でも、なぜか成長すると途端にそういったあそび方をやめてしまったりします。そこで、この手触りや手でいじる感覚を残したまま、自分が作ったキャラクターを動かしてあそべれば、「自分の作ったヒーローでこんな冒険が楽しめる!」と喜びを感じるんじゃないかと考えました。toioは、子どものそういった気持ちを支援するものでありたいと思いました。

となると、キャラクターが自由に動き回れるようなロボット台車を作らなければなりません。さらに、キャラクターがどこにいるか位置がわかるようにすることも必要です。そこで最初は天井にカメラを設置し、上から撮影してロボット台車の位置と向きを認識させようと考えました。体験としては成り立っていたのですが、当時はシステムが複雑で、商品として成立しませんでした。子どもがひとりで部屋にカメラを設置することも難しいですしね。その後、中山がチームに加わり、天井のカメラで撮影するのとは違う新しいアイデアが生まれ、商品化のチャンスが見えてきました。それをソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」のオーディションに応募したところ合格し、プロジェクトが本格的にスタートしました。

画面を使わないあそびは、今どきっぽくないという捉え方もあるかもしれません。もちろん画面を使ったあそびも最高に楽しいですが、同じように画面を使わないからこその面白さもあると思うんです。キューブの動き、音、光で何が起きているのか伝わり、それによってあそびが成り立っているというのも、ある種新しくて面白いのかなと思います。アイデアとしてはシンプルなのですが、技術的には意外と大きなハードルがあり、それがクリアできてようやく実現できたと思っています。

―――技術的なブレイクスルーは、カメラで撮影するシステムをやめ、センサーで位置情報を読み取るようにしたことでしょうか。

中山:そうですね。toioであそんでいると、どうしても手を出したくなります。上からカメラで撮影するシステムでは、その途端にキューブの位置を認識しなくなってしまうんです。でも、絶対位置を検出するセンサーを導入したことでみんなで手を伸ばしながら、ワイワイあそべるようになりました。キューブは2台付属しますが、3人、4人でも場を直に共有して一緒にあそべる。それが現実世界のあそびのいいところですね。

アレクシー:技術は変わりましたが、コンセプトは最初から何も変わっていません。キューブの位置と向きを、センサーで読み取る。設定したルールに基づき、キューブを動かす。そこはずっと同じです。

―――中山さんは、今回のプロジェクトに途中から加わったそうです。toioのどんなところに可能性を感じたのでしょうか。

中山:2013年にソニーCSLの研究発表イベントで見た時から、「すごいコンセプトが出てきた」と思いました。もともとレゴRが大好きでしたし、自分が作ったものがゲーム性をもって動くことに大きな価値を感じました。幼い頃には自分で作ったキャラクターを自分の手で動かしていましたが、toioなら実際に動かすことができます。ちょうど僕に子どもができて間もない頃だったので、子どもにあそばせるものとしても最高の製品になるなと思いました。

―――開発コンセプトは変わらないというお話がありました。キューブの位置と向きの情報があれば、あそびのルールを表現できるということでしょうか。

アレクシー:「位置」、「向き」、そして「時間」の3要素があれば、ほとんどのゲームが成立します。キャラクターがどこにいてどこを向いているかという情報があり、時間の進め方をコントロールすれば、インタラクションを作れるので。

田中:それがアレクシーの研究成果なんです。ゲームの最小構成要素、どうすればプレイヤーが楽しいと感じるかという点を研究してきたので。キューブを2台にしたのも、アレクシーの研究に基づいて決めたこと。1台だとできることに限界がありますが、2台あれば自分と相手で役割分担でき、あそびに広がりが生まれます。そういったコンセプトが最初から見えていたので、あとはゴールを目指して技術的な課題をクリアしていきました。

アレクシー:キューブのサイズについても、最初から決めていました。手のひらに隠れるぐらいの大きさだということが大事。上におもちゃを載せても、このキューブの存在が目立たなくなりますから。そうすると、キューブではなく上に載せたおもちゃが主役に見えます。さらに、キューブを手に持ち、入力デバイスとして扱うこともできます。キューブを使ってメニューの選択、クリックなどができるので、手で持てる大きさにしようと決めました。

―――上に載せるおもちゃとして、レゴ®ブロックも取り付けられるそうですね。

田中:レゴジャパンさんとのコラボレーションにより実現しました。レゴ®ブロックをキューブにくっつけてあそべるようになっていて、サイズ感もぴったりなんです。レゴ®ブロックで作ったキャラクターを載せると、キューブのことは忘れて自分の分身、自分のキャラクターに感情移入してあそぶことができます。

toioに「間違ったあそび方」は存在しない

―――では、あらためてtoioの仕組みについて教えてください。

中山:キューブの裏に読み取りセンサーがあり、特殊な印刷を施したマットの上に置くとキューブがマット上のどこにいるか、どっちを向いているかという位置と向きの情報が瞬時にわかるようになっています。例えば1台のキューブをマット上の黄色いマスに載せると、その情報がコンソールに無線で飛ばされます。そして「あっちのキューブは黄色いマスにいるぞ」と、もう1台のキューブをそちらに向けたり、追いかけさせたりすることができるんです。こうした仕組みを使い、工作ゲーム、バラエティゲーム、プログラミングゲームなどさまざまなあそびを楽しめるのが、toioの基本コンセプトです。

技術的なポイントは、マットの中に特殊な物質を埋め込んでいるわけではなく、すべて印刷で実現していること。マットだけでなく、タイトルによっては絵本、カードなどでこの技術を使用しています。

ソフトは、現在『トイオ・コレクション』『工作生物 ゲズンロイド』『GoGo ロボットプログラミング ~ロジーボのひみつ~ 』の3タイトルが発売中です。どのタイトルにも、カートリッジ、マットや絵本などの印刷物が入っています。また、タイトルの世界観に合ったキャラクターも付属します。もちろんレゴ®ブロックなどを自由に載せていただいていいのですが、付属のキャラクターを使うと一瞬で世界観が変わります。子どもたちが思い描いたキャラクターが、すぐに動き出す。それがtoioの魅力だと思います。

―――各タイトルはどんな方々が開発されているのでしょう。

中山: いろいろなクリエイターと企画を詰め、僕ら自身で作っています。例えば『工作生物 ゲズンロイド』なら、「ピタゴラ装置」でおなじみのユーフラテスさんと一緒に企画を考えました。将来的には開発キットを提供し、他のメーカーに制作していただくことも考えています。

アレクシー:ただ、実世界であそぶtoioならではの苦労もあります。ビデオゲームの世界は、モニタの中で起きていることがすべてですよね。でも、toioは実際に触れるおもちゃなので、何が起きるか予測ができないんです。子どもが手を出したり、上に載せたものが重くて倒れたり、滑ったりすることもある。それらすべてに対し、反応を返さなければなりません。ソフト開発の方法としては、これまでと違う作りこみが必要です。

一緒に企画を考える方々には最初に必ずお話するのは、toioには間違ったあそび方、悪いあそび方がないということ。それぞれのタイトルが、どんなあそび方も受け入れなければならないんです。こちらが考えたルールであそんでほしいけれど、子どもが「いや、そうじゃない」と自分なりの方法であそびだした時、コンソールから「ブブー」とダメ出ししてほしくない。例えば『トイオ・コレクション』の「クラフトファイター」というバトルゲームでは、好きなキャラクターを載せたキューブをリング状コントローラーで操作し、相手を土俵から押し出したり、倒したりすると勝ち負けが決まります。僕らはそういうあそびを提案していますが、コントローラーを使わずに土俵を動かしてもいいし、キューブを手で動かしてもいいし、障害物を置いてもピンポン玉を投げてもいい。でも、そのうえで子どもたちが考えてくれたあそび方に対し、コンピューターは最低限の勝ち負けを判定しなければならないんです。それが他のプラットフォームにはない、手で触ってあそぶtoioならではの特徴ですし、そこに面白さを感じます。

田中:どんなあそびにも、必ず余白を設けたいんです。物理世界であそぶものは、いつでも手を出していじれてしまうので、コンピューターが完全にコントロールすることはできません。それを逆手に取り、余白を残したうえで、その余白も含めて楽しんでもらう。こうした考えを面白がってくれるクリエイターもたくさん見つかりつつあるので、一緒に企画を考えながら形にしています。

アレクシー:toioは、どんなあそびも支えたいんです。位置や向きを認識して自動で動くというルールしかなく、「このルールを活かすためのあそびは何ですか?」というプラットフォームになっています。ユーザーの皆さんも、僕らが想像していなかったあそび方をしてくれて、こちらの思いを倍にして返してくれています。とても楽しいですね。

―――どんな使い方が印象に残りましたか?

中山:キューブの上に自分が好きなものを載せてあそぶ人が多いですね。『工作生物 ゲズンロイド』でも、自分が好きな素材を使って新しい生物を作ってみた方が多いです。い草のように、意外な素材を使う方も(笑)。ほかには、マットを駐車場に見立ててキューブを駐車させてみたり。いろいろな発想で楽しんでいただけています。

田中:商店街や地域のコミュニティセンターで、toioを使った「クラフトファイター」大会を開いている方々も。ほかに今増えているのが、プログラミング教室や科学館でのイベントです。パソコンを使ってビジュアルプログラミング(※)ができるので、「toioを使って授業をしてみました」という声も聞きます。「モノを載せて形を変えるだけでなく動きも自分たちで作りたい」「自分でプログラミングしたい」という方が想像以上に多いようです。

※ プログラムをテキストで記述するのではなく、絵や図形をドラッグ&ドロップといった簡単な操作で可能なプログラミング。子ども向けのプログラミング教室などでよく利用される。

作る、工夫する、ひらめく。そこに最高の楽しさがある

―――プログラミング教育ツールとして、熱い視線を受けていますよね。

田中::ええ、自分たちとしては最初からそのつもりはなかったのですが、ありがたいことにそういった用途にも適しているということで高い評価をいただいています。プログラミングについては、2種類の方法を用意しています。『GoGo ロボットプログラミング』は、全くパソコンを使わずtoioだけであそべます。「今プログラミングが話題だけど、どんなものだろう」という方にも、手軽に楽しんでいただけます。実際、教材というよりゲームのようにあそべるものなんです。ゲーム感覚であそんでいるうちに順次、分岐、反復といったプログラムの基本要素が体でわかってきます。

アレクシー::プログラミングと一口に言っても意味が広いのですが、『GoGo ロボットプログラミング』はその中でも特にプログラミング思考が身につくタイトルなんです。プログラミング思考は、命令を順番に下すことで動き、条件があればそれによって反応する、といった概念のものを指します。プログラミング言語は学ぶわけではなく、どんな場合にも応用できる考え方が身につくタイトルです。

田中:もう一歩進んだプログラミングを楽しみたい方には、ビジュアルプログラミングを用意しています。パソコンを使って、キューブを動かすプログラムが作れます。ロボットプログラミングにおいてtoioがユニークなのは、座標がわかること。座標を使ったプログラミングができるというポイントは、toioならではでもあり、やってみるととても楽しくて深みがあるのですが、まだユーザーの皆さんに十分広まっていないように感じています。画面上のマウスを動かすようにロボットを動かせますし、画面上のキャラクターを動かすようなアニメーションを実世界で行えます。こんなに簡単に動きが作れるというのは、子どもはもちろん大人にとっても感動的な体験だと思います。そして、その先としてロボット工学的にも大学レベルの結構深いプログラムにまで発展できます。

アレクシー:toioを見て、自分でいろいろ動かしたいという方もいますよね。もちろん、僕らもそういうタイプ(笑)。そういったユーザーをリスペクトし、その気持ちに応えるためにプログラムを作れるようにしました。

田中:もともと自分たちのバックグラウンドがエンジニアだったりすることもあり、趣味に近いノリでデバイスを作ったり、ロボットプログラミングをしたりしてきたので、「作ること自体があそび」という思いがあるんです。toioのプログラムを作れるようにしたことで、「こういうあそび方も面白いんだよ」というメッセージを込めてみました。僕自身、ロボットコンテストに出場し、自分が作ったものが勝ったり負けたりする熱い気持ちを原体験として持っています。あそぶだけでなく、作る楽しさ、作ったものを試す楽しさも伝えていきたいと思っています。

―――toioをプログラミング教材という側面で捉える方もいると思います。とはいえ、教材を目的とするわけではなく、あくまでもあそびのプラットフォームなんですよね。

田中:はい、toioの場合は教材というよりも、この商品を通じて作ってあそぶ、工夫する、ひらめくといった感覚を身につけてほしい。そこに最高の楽しさがあると思うんです。何か失敗しても、悔しさをはねのけて作って試したら、うまくいった。その成功の喜び、達成感を味わってほしいと思っています。結果的に、それが教育要素の一部として認めていただけたとしたら、それはそれでうれしいことですが。まずは熱中してあそんでもらうことが第一。それぐらい楽しいものだし、ハマれるあそびだと思っています。

アレクシー:ゲームをプレイする人って、基本的にすごく前向きだと思うんです。ゲームは、目の前に目的があり、頑張れば必ずクリアできるように作られています。その考え方があれば、いろいろな問題を解決できるはず。こうした解決力を育てることができるプラットフォームがtoioなんです。自分が作ったキャラクターをキューブに載せて動かしたら、ちょっとバランスが悪い。それならこんなふうに工夫すれば、バランスが良くなって強くなるんじゃないか。自分が作ったものに対して、すぐに評価が得られるし、さらに改良するためのプロセスも見えてきます。それによって、自分が作ったものがだんだん強くなったり、改善されていくんです。

今までだったらおもちゃを組み立てて両親に見せて「よくできたね」と言われる・褒められるというのがあそびの評価のされ方だったように思いますが、toioは評価の軸が違います。例えばキューブを戦わせる「クラフトファイター」なら、キャラクターを強くするにはどんな形にすればいいのか、対戦するごとにだんだんわかってきます。見た目はそんなにカッコよくないかもしれないけれど安定感は抜群だとか、あるキャラクターに対する反撃が効果的だとか、そういうことが見えてくる。目の前にある課題を自分の力でクリアし、その達成感を通じてあそびがだんだん面白くなる、それがtoioです。そう考えると教育的なものの一環かもしれませんが、あくまでもあそびが中心なんです。

―――どのタイトルにも、自分で考える要素が含まれていますよね。あそんでいるうちに、自然と「ここを工夫したらもっと強くなるかも」「これを変えたら面白い生物ができそう」という発想が生まれます。

中山:すべての子どもがなにもないところからクリエイティビティを発揮できるかというと、そうとも限らないかもしれません。なので、そこをうまくガイドして、クリエイティブな方向に引っ張っていくような仕組みが必要だと思っています。『工作生物 ゲズンロイド』に付属する本にも、最初は「こう作ってください」と決められた方法が書いてあります。そうやってひと通り生物を作り終わったあとに、「同じ動きでこういう工作をすると違う生物に見えるよ」といった例をいくつか見せているんです。そうすると、「自分も新しい生物を作れるかも」という方向へ引っ張っていけます。コンテンツを作るうえでも、余白を残すようにしています。

田中:どんな人にも、クリエイティビティは備わっています。ただ、それを表に引き出すのはそれなりに慣れが必要です。クリエイティビティを表現する訓練をすれば、自然と考えていることを表に出したくなるはず。そのためのモチベーションを、できるだけいろいろなところに仕込むようにしています。いきなり「さあ、クリエイティビティを発揮してください」と言われても、みんながみんなそういう表現に慣れているわけでもありませんから。

アレクシー:子どもってどんなものでもあそびにしますよね。それは最大のクリエイティビティかもしれません。大人からすると面白いあそびには見えないかもしれないけれど、必ずあそびが成り立ち、えんえん続けられる。そういうクリエイティビティを支えるために、toioがあると思っています。toioでは、やったらダメなことはありません。とりあえずやってみる。つくって、あそんで、ひらめくというサイクルです。そういう考え方を育てられたら、我々の勝ちかなと思います。

キューブは主役ではなく、あそびを支える“黒子”

―――各地でワークショップを開催していますが、反応はいかがでしょう。

田中:毎回たくさんのお客様にお越しいただき、とても盛り上がっています。

アレクシー:泣いちゃう子もいるよね(笑)。

田中:真剣勝負で負けて、泣いちゃうんです。

アレクシー:それだけ気持ちが入るんでしょうね。自分が作ったもので戦って、初めて負ける。その悔しさに、涙がボロボロこぼれる。あそびひとつで子どもの気持ちをそこまで揺さぶることができたのなら、僕らとしてはうれしいです。

田中:悔しくなって、お父さんが手を出して真剣になって取り組み始めるケースもありますよね(笑)。僕自身も子どもと一緒にtoioであそんでいますが、最初から開発に関わっていたのにいまだに新しいあそびを発見しています。

アレクシー:我が家には3歳と6歳の子どもがいます。6歳の子はあそび方通りに頑張っていますが、3歳の子はルールなんてどうでもよくて好きなことをしてあそんでいます。キューブに好きなものを載せて動かすだけで、満足するんですよね。いつもあそんでいる人形をキューブに載せて、大きすぎてくっつかないけど楽しそうにあそんでいる。そういう姿を見ると、感激しますね。

中山:toioは6歳から10歳ぐらいをターゲットに想定していましたが、イベント会場では中高生が真剣にあそぶ姿も見られました。小さいお子さんについてきたお兄ちゃんが、ビジュアルプログラミングや『工作生物 ゲズンロイド』に熱中していましたし、LITALICO(※)さんと共に行なったワークショップでは、高校生が楽しそうに笑いながらプログラミングをしていて。小さい子から大人まで幅広くあそべるプラットフォームだったんだなと改めて実感しました。

そもそもtoioは、プログラミングスキルが高い学生も楽しめる余白がありますし、大学の研究室で使えるレベルのロボットだと自負しています。そんなにやわなおもちゃじゃない(笑)、という思いが、さらに強くなりました。

※ IT × ものづくり教室「LITALICOワンダー」を展開する企業。

田中:ネット上も「大人でも楽しめる」という声をいただいています。おじいさんがお孫さんのために買って、3世代で楽しんでいるご家族もいるようです。

―――ユーザーが生み出したあそびを共有する場も設けているのでしょうか。

田中:現在は、toioの公式TwitterYouTubeチャンネル で、我々が考えた「あそびレシピ」を公開しています。今後はユーザーのあそび方も含めて紹介していきたいと思います。

中山:今のところ『トイオ・コレクション』に関する新しいあそび方をいくつか公開していますが、今後は『工作生物 ゲズンロイド』の新規生物もどんどん追加していく予定です。紙だけでなくいろいろな素材を使った生物が出てくるので、ユーザーのクリエイティビティも刺激されると思います。

田中:全タイトルに「一度解いたら終わり」ではない仕掛けや工夫があります。公式サイトであそび方を紹介しているので、そちらもチェックしていただければありがたいです。

―――コンテストなどを実施する予定は?

田中:あそびを作るコンテスト、ロボットコンテストのようなあそび方に関するコンテストなどいろいろな形が考えられるので、これから準備したいと考えています。

―――新タイトルとしては、『トイオ・ドライブ』が控えています。

田中:お子さんは乗り物が好きですよね。かなり以前からキューブを乗り物のように運転したいという声もいただいていますし、僕らも面白そうだなと思っています。現在、開発を進めているところです。

中山:詳しいあそび方はまだ公表できませんが、「あそびの余白を大事にする」というコンセプトはこれまでのタイトルと共通しています。マットの上でも小気味よい操作ができるよう調整し、小さいながらも爽快なドライビング体験を提供したいですね。

―――toioを使ったメディアアートも公開されています。今後、どのような展開を考えていますか?

中山:キューブの制御仕様書を公開しました。現在はコンソールからしか制御できませんが、仕様書を公開することでパソコンやスマートフォンからも制御できるようになるので、多くのクリエイターに開発していただければと。プログラミング環境を提供することで、大学の研究室、一般の開発者、メディアアートのクリエイターなど多くの方にYouTubeやTwitterに作品をアップしてほしいと考えています。

田中:ハッシュタグ「#toio」をつけて、SNSにどんどん投稿していただきたいですね。こちらも、そのための場づくりをしていきたいと思っています。

―――toioはいろいろな可能性を秘めていますが、どのような広がりが考えられますか?

田中:カートリッジで提供している各タイトルのあそびは、「こういうあそびが楽しいですよ」「意外とこういう使い方もできますよ」というサンプルです。まずは、そちらをあそんでいただきたいですね。とはいえ、それだけで閉じるものではないので、先ほどお話したツールや仕様書によって、独自のあそびを作る楽しさも味わっていただきたい。お父さん顔負けのプログラムを作るお子さんもいるので、どんどん表現してほしいですね。

中山:子どもが作ったゲームが、新たなタイトルとして発売されたら面白いですよね。作るほうもテンションが上がりそうです。

アレクシー:キューブが主役ではないというのが、toioの一番のポイントなんです。キューブは、あくまでもあそびを支える裏方。だからこそ、派手なおもちゃが多い中、toioはあえて白くしてロゴもうっすら見えるぐらいにするという繊細な雰囲気で作っています。ユーザーが上にどんなものを載せても、テイストが合うようにしたい。裏はtoioで動いていますが、その存在を目立たなくして、表はユーザーが作ったキャラクターを主役にしたい。キューブの存在が見えなくなった瞬間が、ある種、toioの本当の使い方なんです。

中山:白いけれど黒子だよね(笑)。

5年後、10年後、toioはあそびの標準になるとうれしい

―――黒子のようなプラットフォームだからこそ、体験しないと面白さが伝わりにくいという面もありそうです。

アレクシー:プラットフォームとしてはいろいろできますが、最大の課題は「toioの代表的なあそび方は何ですか?」「toioってつまり何?」と聞かれた時に答えが難しいこと。「おもちゃを載せて、動かして、ルールに従っていろいろなことが起きる」と言っても、なかなか想像が膨らみません。キューブだけ見せて「これがおもちゃの未来です」って言っても、理解できないですよね(笑)。似た商品が存在しないので、体験を通じてtoioの価値を伝えるのが一番かなと思っています。

一度体験してもらうと、「なるほど、こういうものだったんですね」と言ってもらえます。「あそび方を支える」というtoioの機能が、体験を通じて伝わったのでしょうね。逆に言えば、こういうプラットフォームだからこそ、いろいろな可能性があると思っています。

田中:toioというあそびが代名詞になり、他に説明がいらない状態になるのが理想ですよね。それぐらいユニークなものを作ってきたという自信もあります。技術が詰まっていますし、他にはない面白い体験ができるので、まずはぜひ触って驚いてほしいです。

アレクシー:技術に詳しいエンジニアでも、「動く姿を見るまでは理解できなかった、想像以上に凄かった」という意見も多かったよね。

田中:「どうやって動いているんですか?」とエンジニアの方々からもよく聞かれます。

アレクシー:本当のtoioの感覚って、これまでにない技術や体験なので、触ってみるしかないんですよね。ただ、一度触った子どもは、間違いなくすぐに自然な体験として受け入れて、次もあそんでくれます。

田中:子どもは、技術のことを知る必要もないですしね。

アレクシー:どうやって動いているかなんて、魔法でもなんでもOK。そのあそびが途切れることなく続けられればいい。それが子どものあそびですよね。toioも、子どものただ「あそびたい」という気持ちを支えるものでありたいと願っています。

―――5年後、10年後、toioはどういう存在になっていてほしいと思いますか?

アレクシー:あそびの標準になると思います!似たような商品はないと言いましたが、大学の研究室ではtoioの5倍ぐらい大きいスケールのロボットが使われていることもあります。でも、このサイズでこの精度を出せるのは、今のところtoioしかありません。それが商品になって手頃な価格で手に入るのは、ロボット研究者からすると奇跡に近いことなんじゃないかな、と。しかも、その目的があそびですからね。「おもちゃを支えるものです」と言うと「え?」という反応が返ってきます(笑)。プロフェッショナルも驚くすごい機械なのに、子どもがあそぶものというのがいいですよね、と考えています。

将来的には、「おもちゃの裏にはtoioがいる」というのが当たり前の世界になってほしい。マットがあれば何でもできるとなれば、今までの生活も変わってくると思います。会議室でもどこでも、あらゆる場面でのこんな小さなロボットが自分を助けてくれたら、世界がとても面白くなりますよね。

そのためにも、まずはtoioを当たり前の存在にしていきたい。そして子どもたちがリアルな問題に直面した時、「なぜロボットがやらないの?」と当たり前のように考えるようになり、「あの時はこうしたから、今回はこの力を使えば難しい問題も解決できるはず」と思ってくれたら完璧ですね。

中山:僕もアレクシーと近い思いを抱いています。モノを作る時に、toioが紙やハサミ、電子工作器具や工具と同じようなツールとして使われたらいいなと思っていて。動くロボットが必要な時は、当たり前のようにtoioを選択する。そんな世界を目指しています。

子どもには、toioをどうやって制御するかあそびの中で感覚を身につけてもらい、発想を広げてほしい。プログラミング、クラフト、研究などどんな使い方でもいいので、あそび中心でいろいろな方向に活用してほしいと思っています。

toioプロジェクトチーム プロフィール

  • 中山哲法(なかやま てつのり)
    製品企画・開発/ソフトウェアプロトタイプ

    北海道大学大学院 理学研究科 数学専攻修了。
    組み込みソフトウェアエンジニアとして、多岐にわたるデジタルイメージング製品群の開発に従事。
    特に有線・無線通信制御を得意とし、それらを用いた新機能のプロトタイプ・新規カテゴリ商品の立ち上げを担当。
    toioについては、製品企画、基礎技術開発の他、「toio」のネーミングも考案。
    主な受賞にSony Outstanding Engineer 2018、グッドデザイン金賞、第22回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 審査委員会推薦作品への選出など。

  • 田中章愛(たなか あきちか)
    事業企画・開発/ハードウェアプロトタイプ

    筑波大学大学院修了。2013年~14年スタンフォード大学訪問研究員。ロボティクス分野の研究開発を経て、2014年よりソニーのスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム(SAP)やCreative Loungeの企画運営に携わる。2016年SAPの新規事業としてtoioプロジェクトを提案、以降商品化・事業化に従事。
    主な受賞歴はBEYOND MILLENNIALS Game Changer 2019グランプリ(Career部門)。

  • アンドレ・アレクシー
    コンセプト発案・UX開発

    東京工業大学大学院コンピュータサイエンス博士課程修了。デジタルネイティブ世代にも通用する娯楽を確立することを中心テーマとして、新たな創作活動を探求。オープンリール・アンサンブルから三宅一生プロデュースの青森大学男子新体操部に至るまで、数々のアーティストらとコラボを行っている。