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特別対談

「toio」はSTEAM教育にどう役立つのか

芸人 エハラマサヒロさん、教育経済学者 中室牧子さん

芸人・エハラマサヒロさん×教育経済学者・中室牧子さんカタログ巻頭スペシャル対談全文掲載
これからの教育のあり方や「toio」はSTEAM教育にどう役立つのかをうかがいました。

――エハラさんは、日々子育てについてSNSなどで発信されるときに、いわゆる"受け身のYouTuber"というより、自ら手を動かしてコミュニケーションする...ということを意識されていると思うのですが、いかがですか?

エハラ:僕が子どもたちと接するときに一番考えてるのは、接し方。"同い年の目線で喋る"ということを考えてるんです。
10歳なら10歳、8歳なら8歳、6歳なら6歳の子に自分がなったときに、何をしゃべるかな?ということを考えるようにしてますね。
子どもが、親となんでもコミュニケーションが取れて、ずっと友だちみたいな感じやったら、信用もできて、どんな話もできると思うんですよ。でも、親が怖いもの・すごいものや、って思ってしまうと、隠さなあかんことが出てしまう。だから、ずっと同じ目線でしゃべって、ずっと仲よくおれるようにしたいな、と思ってます。
自分が中学生のときに、親に何を言われたくなかったか?あれ言われて嫌やったな、っていうことはせずに、あれを言われたかったな・こうやってくれたらよかったな、っていうことがずっと心に残っているので、それを意識してしゃべろうとしてますね。

――例えば、長女のウミちゃんがそろそろ10歳ですね。ウミちゃんはどういう感じで話しますか?

エハラ:僕が10歳のときって、ただただ「たのしいこと」にまっすぐやったんですよ。だから、たのしいことはやりたい・たのしくないことはやりたくない。ただ、親からは、他のしくもない勉強を「やれ」と言われ、「この習いごとをやった方がいい」と言われ...。
「やった方がいい」とか「後々身につくから」とか「プラスになるから」って言われても、わからないですよ、そんなの。目の前にあるものが、たのしいか・たのしくないか、だけで判断している年齢なので。

僕も、なんか知らんけど塾に行ってて、たのしくなかったな~ていう思い出があるんですよ。でも、「この習いごと、自発的にはじめたことじゃないけど、たのしかったな」というものもあって。
僕は、空手とか少林寺拳法がとてもたのしかったんです。それで、日曜日に試合があって、要はみんながあそんでる時間に、試合に行かないといけないじゃないですか。それでも「みんなとあそびたいのに!」と思うこともなく、「試合たのしみやな!」って感じてて。

そういうこともあったので、僕はウミ含めて子どもたちに"プレゼンをしてあげる"ようにしてるんです。選択肢を増やしてあげる、ということ。習いごとでも、「こんな習いごとあるよ」「あんな習いごとあるよ」って。
それで、その中で子どもがたのしいなって思ったら続けるし、おもしろくないなって思った瞬間に辞めてOKっていう。
いまたのしいことだけで、伸ばすことができることだけを選んで、進めていってあげるようにしてます。

――親がやらせたいことと、本人がやりたいことって違いますもんね。あくまでも、本人がやりたいことを優先する、と。

エハラ:そうですね。ただ最低限、勉強とかやっておいた方が絶対プラスになることもあるじゃないですか。でも子どもは「勉強やりたい」ってならないのはわかってるから、「勉強をいかにたのしいことにしてあげようか」と思ってて!タイムアタックみたいに「問題を10問解くのに、1分半でできるかな?」みたいな。それができへんだら「あ~クソォ!次は1分半でできるかなぁ?」みたいにやって。
4枚の宿題があって、4枚ともできへんだら、次のときにはなんとかクリアしたいって思ってくれたりするんです。
やらなきゃいけないこと、やっておいた方がいい、と親的に思うことは絶対にあるから、ゲーム化してあげたらたのしいことになっていくのかなって。

――中室先生、エハラさんのこういうやり方は、経済学的にどう思われますか?

中室:私自身は子どももいませんし、それぞれのご家庭の教育方針について評価する資格はありませんが、お話を聞いていてすばらしいご家族だなと思いました。自分が子どもだったら、エハラ家で育ちたかったです(笑)。

また、今のお話を聞いていて、私自身の専門分野である教育経済学の分野でおこなわれた研究とも、関連があると思いました。最近、教育経済学は学力テストや知能検査などで計測できる「認知能力」だけではなく、「非認知能力」も分析対象にするようになっています。さきほどエハラさんがおっしゃった「意欲」や「興味・関心」などがそれにあたります。子どもの頃に高い非認知能力を獲得すると、おとなになった後の収入が高かったり、健康で社会安定的な生活を送ることができる、ということを示した研究があります。

中でもとりわけ有名なのは、2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授の研究です。この研究では、質の高い幼児教育によって、幼少期に高い非認知能力を獲得した子どもは、40歳時点での収入が高かったり安定した職業に就くことができているなど、経済的・社会的に恵まれた生活が送れていることが示されたのです。
こうした研究を踏まえると、エハラさんが子どもたちの意欲や興味・関心をかき立てるようにされていることは、理に適っているのではないかと思います。

エハラ:おお...!自信持ちます(笑)。

――得てして親やおとなは、「勉強しなさい!」って言いたがりますよね。それは、結局あまり身にならないんでしょうか?

中室:「勉強しなさい」がまちがっているとは思いませんが、「なぜ、勉強することが重要なのか」を考えることこそが重要ではないかと思います。

私たち経済学者は、自分の半径5メートルの範囲で起こった経験談ではなく、巨大なデータの中からその答えを見出そうとしているのです。最近は、計算機科学の進歩もあって、何万人、何十万人のデータを分析することができるようになってきました。それだけではなく、同じ個人を長期にわたって追跡したデータもあります。
このようなデータを用いれば、「今勉強することによって、将来どうなる(可能性が高い)か」ということがわかるので、今までよりもさらに「なぜ、勉強することが重要なのか」を説得的に説明することができるようになってきたんです。
「非認知能力も重要である」というのは、そうした科学の進歩の中で明らかになってきた、新しい知見です。これからは、周囲の人の個人の経験談だけでなく、科学の新しい発見も、学校や家庭で参考にされるような時代になるかもしれません。

――データをしっかり取っている、ということですね。

中室:そうですね。経済学が特に重視しているのは「教育の収益率」です。
教育というのは投資ですから、株や債券と同じように収益性が大事なのです。親であれば、誰しもが子どもたちに将来、健康で、経済的に安定して、良好な人間関係の中で、幸福な人生を送ってほしいと願うのではないでしょうか。
しかし、子どものためにかけられる時間やお金が無限にあるわけではない。それでは、子どもが何歳くらいのときに、何にどのくらいの時間やお金をかければよいのだろう――。そういうことも研究しています。

――今、世界的に「STEAM教育」のような、子どもの将来につながり意義がある教育スタイルを実践していこう、という流れがあると思うんですが、そもそもどういった狙いでそれが進み、当たり前になりつつあるのかを、改めてご説明いただけますか?

中室: 私は、次の時代を特徴づけるキーワードは「人口知能とデータ」だと思います。「人工知能とデータは、産業革命並の技術革新をもたらす」という研究者もいます。
18世紀に生じた産業革命では、それまで主力の輸送手段であった馬車が蒸気機関車に置き換わったことはよく知られています。馬で移動していた人たちが機関車を使うようになったわけですから、人びとの生活をどれほど大きく変化させたかは言うまでもないでしょう。人口知能とデータは、それくらいの変化を私たちの生活にもたらすということです。

すでに身近なところでも、私たちは人口知能とデータの恩恵を受けています。例えば楽天で買い物をしたときや、Netflixでドラマを観るときに、これまでの購入履歴や視聴履歴に基づいて、自分の好みや関心に沿った商品やドラマがレコメンドされます。利用者が増えれば増えるほど、利用者の購入履歴や視聴履歴のデータが蓄積され、どんどんレコメンドの精度が高くなり、サービスの質も上がっていく。このため、人工知能とデータ活用に詳しい人材が必要なのです。STEAM教育は、人口知能とデータ活用ができる人材を育てようという目的があるのです。

エハラ:おもしろいなぁ~!

中室:GoogleやAppleなどの企業群を「GAFA」と呼びますが、これらの企業が注目されるのは、さまざまなプラットフォームから膨大なデータを蓄積しているからです。
18世紀の産業革命はイギリスを中心に生じましたが、今私たちが体験している21世紀の産業革命は、日本だけではなく世界規模で生じており、ユーザーの獲得競争においては、日本はアメリカや中国に後塵を拝している部分もあります。日本では有名な楽天の月間利用者数は0.4億人にすぎませんが、Amazon.comはその10倍の、4億人もの利用者がいるのです。
国としても、STEAM教育を充実させていくことはとても重要です。

――なるほど。人材を育てることを考えると、子どものときから慣れ親しんでおくのが大切になる、ということですか?

中室:STEAM教育を充実させようというのが、世界的な潮流です。そもそも「STEAM教育」は、アメリカのバラク・オバマ前大統領が、「STEAM教育を国家戦略として推進する」ことを一般教書演説の中で発表して以来、注目されるようになりました。国をあげてSTEAM教育に投資をしていくことを宣言したのです。
日本も、2020年に文部科学省の学習指導要領の改訂時に、小学校でプログラム教育をはじめることになっています。

――エハラさんは、STEAM教育という言葉はご存知でしたか?

エハラ:言葉は聞いたことがありますが、よくわからないです。本当に、チンプンカンプンですね...(笑)。

中室:サイエンス(科学)、テクノロジー(技術)、エンジニアリング(工学)、アート(芸術)、マセマティクス(数学)の頭文字ですね。アートというのは、ここでは芸術というより、「教養」という訳のほうが適当かもしれません。

――紐解いてみると、エハラさんはこのあたりで意識していたことはありますか?

エハラ:う~ん。僕が中学生のときって、習いごとを死ぬほどしてたんですよ。週に7個とか、それをそれぞれ、週2や週3でやってて...。学校から帰って、習いごとが2つの日は楽な日やったんですよ。だいたい3つとか、土曜日も3つくらいやったり。
だから、あそぶ時間がなかったんですよね。小学校から国立の学校に行ってて、40分ぐらいかけて電車で通って。地元に全然友だちがいないんです(笑)。
家に帰ったら、街の勉強できる施設とか、空手とか少林寺拳法とか相撲とかサッカーの習いごとに行って...。習いごと先には友だちがおるけど、毎日ずっとあそぶ仲間とかはいなくて。

親はめちゃくちゃ教育熱心で、教育ママでしたね。小学校に上がる前からお受験しましたから。だから逆に、自分の子どもは「お受験させないで、地元で友だちをつくる」方向にしたんです。小学生の子どもには、さみしい思いをせずに無邪気にはしゃいでいてほしいし、いろんなものに興味を持ってほしい。

それで言うと、子どもたちは僕がいろいろプレゼンするあそびや勉強が「どうせたのしいもんや」って思ってくれてるんです。「パパが持ってくるやつはどうせたのしい」と。仮にたのしくなかったら、僕がなんとかたのしい方向にプレゼンしますしね(笑)。いろんなものに興味を持ってもらいたいから。
だから、STEAM教育というものを意識したことはないですけど、いろいろな面で、そういうのが入っているものはすでに見ているかもしれないですね、子どもたちは。

――STEAM教育は、データやAIでもあり、エンジニアリングも入り、手を動かして何かをつくるものづくりや、教養の部分もあって...単純に「覚える」座学の教育ではないということがすごく大事なのかな、という気がするんですが、いかがですか?

中室:おっしゃることはとてもよく理解できます。一方で、まなぶことそのものは、決してつらいことではありません。私たち研究者の仕事は、常に新しいことをまなぶことと表裏一体ですが、そのことを辛いと思ったことはありません。そもそも、何か新しいことをまなぶことは、とてもたのしいことです。
エハラさんは子どもたちがたのしくまなべるような、「きっかけ」を作ってあげたいと考えておられるのではないかなと思いました。

エハラ:本当にそうかも!
知識欲が出てくるのって、ある程度おとなになってからだと僕は思っていて。
僕のマネージャーが、東京大学の大学院を卒業してるんですけど、めちゃくちゃポンコツなんですよ!まあこれはネタで言ってる部分もあるんですけど...(笑)。
東京大学の大学院を出てる=全員すごい人・完璧な人って思われがちですけど、僕は"社会不適合者"なんじゃないかと思ってるから(笑)。
まず変態なんですよね。僕が「ちっちゃい頃から勉強めちゃくちゃ好きやったやろ?」って聞いたら「はい、めちゃくちゃ好きでした」って。「隣で誰かにゲームされてても、ゲームより勉強の方がしたかったやろ?」って聞くと、「そうなんですよ。自分が好きなこと=勉強をやってたら、まわりからすごいすごい、って言われて」って(笑)。

まわりが「やりたくない」ことを、たのしくてずっとやってる人もおるんですよね。ずっと図鑑見てる子、ずっと電車見てる子、おるじゃないですか。わが子がそうやったら、親は「大丈夫かな?」って思っちゃいますよね。
同じ吉本興業の中川家の礼二さんも、子どものときから電車が好きで熱中しすぎて、1回病院に連れて行かれたらしいですよ(笑)。
でも、親みんなが「ある程度子どもらしくて、ある程度勉強ができて」という、一般的な"普通の子"を育てようとして、一点特化の子を変な風に見がちじゃないですか?

それと、教え方次第で、おもしろい科目も出てくるわけじゃないですか。僕も学生時代にあったんですよ。歴史の授業がおもしろくて!歴史は別に好きじゃないし、暗記も好きじゃないんですけど、その先生の話を聞いてるのがおもしろかったんです。だから、教え方なんかなぁ、と。
ただ単に詰め込み教育をして、「これを覚えてください」「なんでですか?」「覚えなあかんから!」って言われても、何がおもしろいかわからへんし。そこにたのしさをどう見出すかを、教えてほしいわけで。

だから、中室先生がおっしゃった通り、覚えることとか、新しいものを知ることはたのしいことで、新しい教材や新商品を使って、それを触ってみることもひとつの教育やと思うんです。まあ、あんまり子どもたちって「学びたい!」って思うことはないから、興味のあることを伸ばしていくこと自体が、結局はまなびに繋がっていくんじゃないかな?まなばなければいけない平均的なことは押さえながらも、興味があることだけは強烈に教える、っていうことでいいのかな、と思ってるんですけどね。

中室:元陸上選手の為末大さんの「努力は夢中に勝てない」という名言がありますけれど、まなびに夢中になれるといいですよね。

エハラ:芸事をはじめて思うんですけど、"天然"みたいなキャラクターの子が出てきて、大爆笑を取るんですよ。僕らが一生懸命考えて出したボケも、天然ちゃんの一言で大爆笑をかっさらわれるんですよ!「よし、俺も天然になろう!」って、天然発言をいっぱいかき集めて、それを出しても、勝てないんですよね、ホンモンには。
努力と夢中って、違う話かもわからないですけど、マジで純粋で好きで突っ走ってるやつって、「そいつの10倍勉強したらできるやろう」って思っても、けっきょく無理ですね。定着するスピードが違うもん。

――あそびなのか、まなびなのかは別として、「夢中になる」ことを体験してもらうのは大事ですね。
toio™️を、今回おふたりにお試しいただきました。エハラさんは、4人のお子さんが取り合いになるぐらいたのしく遊んでいた、ということですが、どういう感じであそばれましたか?

エハラ:ひとりがやり出したら、「次わたし!」「次わたし!」っていう感じで。子どもって単純やから、そこにあるものがおもしろくないものでも、取り合いになったら自分もやりたい、ってなるんです(笑)。
toio™️はおもしろいものだから余計に、取り合いになってましたけど(笑)。
課題を何人かで一緒にやったりとか、なんとなく仲よくやってましたけどね。

――まさにゲームのように、「クリアしていくたのしさ」がありますからね。ソフトによって、例えば音楽的なものや、プログラミングだとかの素地が鍛えられますし。

エハラ:僕は、子どもが遊んでるときも、あえていろいろ教えなくて。toio™️も、スタートボタンだけ押して、「いろいろなとこ触ってみ?」「いろいろ動かしてみ?」と言っただけ。その方が、「え!音が変わった!」とか、子どもたち自身が発見するじゃないですか。
「この操作はこれですよ」って教えたら、それを"たどっていく作業"になりますけど、他に何があるかもわからへん中で、自分で「ここはこうなるんじゃないかな?」「ああ、違かった」「あ、いけた!」って発見していくと、喜びに変わるから。だから、あえて教えない。

――中室先生、それって、まさにここまでのお話に上がった"自分で触って、創造性を育んでいく"ことじゃないでしょうか?

中室:はい、その通りだと思います。
「答えがある問題に、答えを出す」ということではなくて、「答えがない問題の解き方を自分で探る」というプロセスが重要だと思います。toio™️で、使いながら・まなびながら、自分の限界をどんどん超えていくような使い方をしていただければよいのではないかと思います。

私も今回使わせていただきましたが、toio™️では「Scratch(スクラッチ)」というプログラミング言語が用いられていますが、これは就学児がプログラミング基礎知識を身につける上で、とても評判のいいプログラミング言語です。シンプルで、使いやすい点もいいですね。

――通常のプログラミング学習だと、パソコンの画面上でプログラミングをしていきますけど、toio™️は"リアルなモノ"があります。実際に手で触る・動かす、というのは、なにかしら意義があるものでしょうか?</>

中室:そうですね。微細運動(手や指を使った、細かく精密な動作)にもなりますし、発達面でもよい効果があるかもしれません。

――ちなみに、さっきエハラさんがおっしゃっていた、お姉ちゃんがやっていると妹もやりたがる...って、経済学的にも研究がある現象ですか?

中室:そうですね~。年上の兄弟姉妹がやっているから羨ましいっていうことはどこの家庭でもあるとは思うんですが、ただ、何かにどういう影響を与えるのかということは、私の知る限りではよくわかりません(笑)。

――そうなんですね。
また、さっき出た話ですが、国外では「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」に代表されるECサイトがたくさん開発されていますが、アメリカの子どもたちはSTEAM教育を早くから実践しているんでしょうか?

中室:アメリカは、STEAM教育に関しては1990年代から重点化しています。インドや中国、ドイツなどもとても力を入れているんですよ。
日本は、大学に進学する人の実に7割が文系を選択しますが、韓国やドイツでは7割が理系です。また、私の専門である経済学は数学を多用しますし、実験もおこないます。文系に理系の知識が不要というのは、誤解だと思います。

エハラ:僕は、娘がひとり小学校に行ってるんですけど、今の教育がちょっと変わってきたのかな?と思うことはあります。タブレットがひとり1台配られてるんですよ、渋谷区は。夏休みの研究でも、写真を撮って、自分で加工して、先生にネットで提出する...みたいな。それを8歳でやってるわけで、僕の時代では絶対に考えられないですよね。
でも、タブレットを触らせてもやっぱり、子どもにとってはおもちゃやし、割とたのしみながらやってるんですね。これは将来に繋がることやし、絶対に必要になってくることやと思いますよね。

中室:おっしゃる通りだと思います。
小中学生が1人1台のパソコン環境の実現は、政府が推進している「GIGAスクール構想」という政策です。コロナ禍で、仮に臨時休校などが続いても、家庭で学習を受けられるようにするためにも、期待されています。このGIGAスクール構想によって、40人の生徒が1つの教室で、前を向いて先生のお話を聞く従来の授業スタイルが大きく変わるのではないか、という専門家もいます。

エハラ:ホンマに、めちゃくちゃ極端なことを言うたら、例えばめちゃくちゃいい先生がどこかにおった場合、全国でその授業を流せば、教育者をめちゃくちゃ減らせると思うんですよ。管理者はもちろん何人かつけて、めちゃくちゃいい授業をする先生を教科ごとに立てて。昔の教育って"その場のその人数"でしかできなかったけど、今はリモート授業も多いし。
だって、めっちゃムラありますから、先生って!(笑)なんやこの先生、って人もいますよ!
さっきも話した、僕の東京大学出身のマネージャーのように、勉強ができるからすべてができるわけじゃない。要は、頭がいいからといって、それをアウトプットするのが得意なわけじゃないですよね。頭には全部、2TBぐらいのデータが入ってるけど、教えるのは下手、みたいな(笑)。そういう人って、教育者には向いてないかもしれないじゃないですか。でも、頭に全部入ってたら、大学には受かるし、教員免許も取れるし。
それよりも、頭のメモリはちっちゃいけど、エンターテイメント性は高い、みんなにきちんと伝えられる人の方が先生に向いてるな、って思うところもあって。

中室:たしかに、そのような議論はよく耳にします。たしかに、大規模な講義室で聞くような座学は、優れた先生がひとりおられれば十分ですが、実験、実技、ゼミのような少人数指導において、「私の担任の先生」の役割は決して減じるものではないようにも思います。

エハラ:小学校の先生って、何年生でも担当して授業するじゃないですか。でも、1年生を教えるのがめちゃくちゃうまい人もいれば、6年生に教えるのがうまい人もいるやろうし。生徒の個性を伸ばすのがうまい人もいれば、授業をするのがうまい人もいるのに、それを全部ひとりに任せちゃってる。
僕は絶対ね、頭はそんなによくなくても、生徒ひとりひとりと向き合って、信頼させるのがめちゃくちゃ強い先生が担任としておって、授業は別の先生がやってもいいと思うんですよ。全部分業で、得意なジャンルで勝負する!っていう方がいい気がする。

もちろん、学校自体は絶対にいると思うんですけどね。同じ歳で、同じ年月を過ごした人の中で、どこが自分が長けてて、どこがダメなのか。自分はこういう集団やったら、どういう人間なのかっていう立ち位置とか、自分のことを知る上で、集団で生活することは必要だとは思うので。
だから、家でずっとリモート授業を受けるのは、僕は全然いいとは思ってないんですよ。自分の能力がどこまでなのか、というのは、それでは絶対にわからないので。
例えば、自分が普通にやってることが、みんなから「すげー!」って言われたら、「あ、これがすごいんや。つまりこれは僕の長所か」ってわかる。それは、家でひとりでやってても、絶対に気づかないですから。

――エハラさんがさっきおっしゃった「エンタメ性」ということでは、教育において受け身にならずに、"たのしんで取り組める"ところで差が出てきますよね。
toio™️のように、おもちゃのようなエンタメ性があり、自分でつくる創造性をくすぐるツールは、結果としてSTEAM教育や、いろいろなものへの興味に繋がるでしょうか?

中室:そうですね。自分でやってみる、ということが大切ですね。自分でやってみるきっかけをつくるということや、自分でやってみて試行錯誤を繰り返す、ということは、大切な最初のステップだと思います。

エハラ:toio™️であそんでると、プログラミングに興味を持つ子も出てくるし、音楽に興味を持つ子も出てくるでしょう。言うたら、受け取り方はみんな違うと思うんです。どっちにしたって、教育として何かのプラスになっていくとは思いますね。

――最後に、親御さんが「プログラミングってよくわからない」って場合も多いと思うのですが、一緒にたのしんだり、たのしいところを親が見せたり...そういう並走の仕方はあるでしょうか?

中室:私は、親子で一緒にたのしんでいただければいいと思います。
ご両親も新しいことをまなぶつもりで、お子さんにご自身の「まなぶ姿」を見せてあげられれば、まなぶことが学校にいる間だけに必要なことではないことを理解してもらう上でも、よいのではないかと思います。

エハラ:toio™️とかの新しい商品を子どもに買い与えて「はい、これであそびなさい。私はようわからへんけど」っていう親御さんもいるとは思うんですけど、もったいない!
一緒にあそんで、例えば親が全然できひんで、子どもがどんどん覚えていく。僕ね、"子どもに親が負けるところを見せる"のは、めっちゃいいことだと思うんですよ。「パパはできなかったけど、私はできた!」って、自己肯定感が上がりますよね。すごいと思ってる親よりも、自分の方ができてる、っていうことで、もっと意欲が上がるし、もっとすごいことを成し遂げたくなる。

だから僕は、子どもに負け顔を見せるようにしてるんですよね。はじめにお話しした通り、親は絶対的にすごい人・逆らえない人・何にも言えない人になってしまうと、何も言えなくなるから。
自分が間違えたのに、謝らない親ってけっこういるんですよね。親って、絶対的でなかったらいけないって思ってる。ごまかしたり、言いわけをうまいことつくって...。でも子どもは、そうやって言いわけしていいもんなんや、って思っちゃう。

だから、子どもを叱ったときに、もしも勘違いとかがあったら、僕はめっちゃ全力で謝る。一緒に対決して負けたときにも、負けずぎらいを出さずに、すごい負ける(笑)。それで子どもに、もっとやる気を出させるんですよ。
toio™️を一緒にやると、距離が近くなって仲よくもなれるし、子どものモチベーションをあげることもできるんかな、と思いますね。